第10番 霊泉寺
【歴史・由来】
山号の「雲を集める山」というのは、霊泉寺の立地にふさわしい名付けだとうなずけます。標高650mの霊泉寺山の中腹に位置し、目前に広がる乗鞍岳、槍ヶ岳、穂高の3000m級の峰々。眼下に高山市街が一望できる眺望絶景の地にあり、古くから禅場としてにぎわいました。人びとは親しみをもって「愛染」と呼んできました。
境内には美泉が湧き、初代高山県知事の梅村速水はここを「與楽亭」と称し、自筆の額を掲げて祝宴を楽しみ、多くの茶人、文人、墨客が好んで霊泉に親しんだといいます。
霊泉寺の開創については不明ですが、かつてこの地に古刹があって栄えたといいます。天正年間に松倉城主三木自綱が再興しましたが、三木氏没落後、廃絶してしまいました。
その後、金森氏の時代に一如素心尼が山上に神祠を祀り、自ら石棺を埋めて生きながら入定したという記録が、飛騨の歴史をまとめた『飛州志』に残っています。入定は正保元(1644)年5月25日と伝えられ、中興開基とされています。
延宝5(1677)年7月、千島村民が力を合わせて一宇を建立し、一如素心尼が祀ったという愛染堂を現在の地に移し、霊泉寺と号しました。
愛染堂は高山市の重要文化財で、格子天井には明治から大正にかけての日本画家による牛、花、風景などの水墨画64枚が描かれています。大垣の清水麓松、高山の藤井友●、河内豊●らの絵です。お堂には秘仏とされる愛染明王が祀られています。
境内墓地には、梅村速水の後を継いだ宮原積高山県知事の子息篤太郎源成が眠っています。その篤太郎は明治4(1871)年、20歳の若さで逝去しました。宮原積は子息の死を悲しみ、景勝の地である当寺に葬り、高額の供養料を志納しました。千島の人々は毎年、回向供養して、宮原積の遺志を継いでいます。
参道入り口の磨崖仏は、飛騨地方では数少なく貴重なものと言われています。本尊は聖観世音菩薩。円空仏の愛染明王は高山市の重要文化財で同市郷土館に保管されています。
概要 |
第10番 集雲山 霊泉寺(れいせんじ) 真言宗泉涌寺派 ◇本 尊 聖観世音菩薩 ◇観 音 聖観世音菩薩 ◇円空仏 愛染明王 |
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所在地 |
〒506-0032 高山市千島町616 tel. 0577(33)0268 fax.0577(33)5239 |
納経受所 |
本堂前 |
拝観料 |
なし |
駐車場 |
普通乗用車6台 |
Eメール |
kaisen@kca.biglobe.ne.jp |
アクセス |
9番 大幢寺 → 10番 霊泉寺 ◎距離:約7km ◎車で約10分 |